SOCIE

在野の社会学研究者による尽きなく生きることの社会学

評論

2000年という年のほんのわずかな予感 ーーゼロ年代とはなにかシリーズ①

2000年という年 1999年の大晦日。かすかな期待感を抱きながら寝床についたことを覚えている。 2000年問題、世界中のコンピュータが誤作動を起こし、社会が動乱し、慌てふためく。テレビは通常放送から緊急ニュースに切り替わり、人々が一斉にざわめき立つ。2…

文芸批評についてー現実と向き合うこと

「文芸批評」というジャンルの衰退が叫ばれてから久しい。わたしとしてはあまり興味のないジャンルなので、文芸批評が衰退しようが構わないのだが、まあ少しは気になる。わたしは社会科学系の専門だけれど、やっぱり近しい分野なのでどうしても先行きくらい…

「萎え」のはなし

11月5日 長くこのブログを放置してきたが、今日から少し続けてみようと思う。 できるだけ毎日書き続けようと思う。毎日書き続けることで、なにかが突破口のようなものが見えればいいのだけれど。 最近ひしひしとある種の「萎え」のような感覚を抱くようにな…

東浩紀・大澤真幸「自由を考える」

自由を考える―9・11以降の現代思想 (NHKブックス)(2003/05/01)東 浩紀、大澤 真幸 他商品詳細を見る ・「自由」な時代は、本当に自由か? おそらく歴史的にみても、現代よりも「自由」な時代は存在しない。 強権的な君主によって虐げられるわけでもないし、…

大塚英志・東浩紀「リアルのゆくえ」

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書)(2008/08/19)東 浩紀、大塚 英志 他商品詳細を見る ・思想的口喧嘩の対談本 これまでで一番面白かった本は何ですか? と問われたら、私は間違いなく本書を挙げると思う。 この本は、「物語消費…

宮台真司「終わりなき日常を生きろ」

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫)(1998/03)宮台 真司商品詳細を見る ・1995年以降の閉塞感 日本の社会分析家にとって、1995年はただの暦上の一年ではない重要な意味を持っている。彼らは95年以前と以降では、なにかが決定的に…

内田樹「下流志向」

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)(2009/07/15)内田 樹商品詳細を見る ・内田樹のポジショニング 文系アカデミシャンの「内田樹」への態度はたいてい二つのうちのどちらかである。無視か罵倒か。 たしかに彼の文章には、論証と…

見田宗介「まなざしの地獄」

まなざしの地獄(2008/11/07)見田 宗介商品詳細を見る ・文筆家としての見田宗介 見田宗介といえば、日本社会学界に燦然と輝く大スターである。その所以はもちろん「人間・社会の総体」を記述するという大柄なテーマ設定とそれに負けない緻密なロジックにある…

赤木智弘「若者を見殺しにする国」

若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か(2007/10/25)赤木 智弘商品詳細を見る ・希望は、戦争 もう5、6年前になるけれど、「丸山眞男をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争」という論文が論壇誌に掲載された。「希望は、戦争」という…