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在野の社会学研究者による尽きなく生きることの社会学

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル1・2・3」

ねじまき鳥クロニクル〈第1部〉泥棒かささぎ編 (新潮文庫)(1997/09/30)村上 春樹商品詳細を見る ・独特の重み さきに白状しておくと、春樹作品において「ねじまき鳥」は私の中の最高得点である。というのも、本書は春樹作品の中でも異質的な「独特の重み」が…

ユルゲン・ハーバーマス「公共性の構造転換」

公共性の構造転換―市民社会の一カテゴリーについての探究(1994/06)ユルゲン ハーバーマス商品詳細を見る ・ハーバーマスがやりたかったこと 「ハーバーマスについて知りたいんですけど、何を読めばいいですか?」という質問をたまに受ける。たしかにハーバー…

内田樹「下流志向」

下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)(2009/07/15)内田 樹商品詳細を見る ・内田樹のポジショニング 文系アカデミシャンの「内田樹」への態度はたいてい二つのうちのどちらかである。無視か罵倒か。 たしかに彼の文章には、論証と…

カート・ヴォネガット・ジュニア「タイタンの妖女」

タイタンの妖女 (ハヤカワ文庫SF)(2009/02/25)カート・ヴォネガット・ジュニア商品詳細を見る ・カート・ヴォネガットという人 文章を読んでいると、その後ろ側にいる人(作者)の人となりが透けて見えてくるような文章が好きだ。それはなにも小説に限らず、…

デイヴィッド・ライアン「監視社会」

監視社会(2002/11)デイヴィッド ライアン商品詳細を見る ・「監視社会」論の意味 ここ最近、現代社会学の周辺では「監視社会」という言葉がブームになっている。もちろんこの分野をフォローしていない人にとっては全く馴染みないものかもしれないけれど、近…

見田宗介「まなざしの地獄」

まなざしの地獄(2008/11/07)見田 宗介商品詳細を見る ・文筆家としての見田宗介 見田宗介といえば、日本社会学界に燦然と輝く大スターである。その所以はもちろん「人間・社会の総体」を記述するという大柄なテーマ設定とそれに負けない緻密なロジックにある…

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イアン・ハッキング「偶然を飼いならす」

偶然を飼いならす―統計学と第二次科学革命(1999/06)イアン・ハッキング商品詳細を見る ・社会は「偶然」をいかに処理してきたか? 人間社会は偶然が大好きで、同時に大嫌いである。人との出会いにしろ、人生のライフプランにしろ、まったく偶然が介入しない…

二クラス・ルーマン「信頼」

信頼―社会的な複雑性の縮減メカニズム(1990/12/10)ニクラス・ルーマン商品詳細を見る ・ルーマンは解説より本書を読もう 二クラス・ルーマンといえば、難解で知られる社会学者である。たしかに抽象的な話が延々と続いて、いったいなにを言いたいのか分からな…

エドワード・S・リード「経験のための戦い」

経験のための戦い―情報の生態学から社会哲学へ(2010/03/31)エドワード・S. リード商品詳細を見る ・一次的な経験と二次的な情報の戦い ロジカル人間が現場主義人間に敗北する、というストーリーは現代の十八番になっている。最近では「半沢直樹」でもそんな…

中村雄二郎「共通感覚論」

共通感覚論 (岩波現代文庫―学術)(2000/01/14)中村 雄二郎商品詳細を見る ・学術界の「8対2」の法則 昔、博士課程の先輩にきいた話だけれど、学術界にもいわゆる「働きアリの法則」が成り立つらしい。「働きアリの法則」とは、ビジネス界でやたら引き合いに…

嶋根克己・藤村正之「非日常を生み出す文化装置」

非日常を生み出す文化装置(2001/03)嶋根 克己、藤村 正之 他商品詳細を見る ・「日常/非日常」という視点で現代文化をみる 面白い学術書というのは珍しい。たいていの学術書は、読者を面白くさせるという目的で書かれていないし、だいたい重箱の隅をつつい…

ジェームス・W・ヤング「アイデアのつくり方」

アイデアのつくり方(1988/04/08)ジェームス W.ヤング商品詳細を見る ・60分で読めるけれど一生あなたを離さない本 この本には、上のようなコピーが帯に綴られている。確かに京都-大阪間の電車のなかで読み終えることができた。本文は、かなり大きめの文字で…

絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」

イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)(2006/05)絲山 秋子商品詳細を見る ・「絶世の美女」 絲山秋子の作品をはじめて読んだのは、たしか大学生の頃だった。その頃は「面白いものを書く新しい作家はいないか」と思って新人賞を取った作品を順番に読んでいた。…

真木悠介「時間の比較社会学」

時間の比較社会学 (岩波現代文庫)(2003/08/20)真木 悠介商品詳細を見る ・日本社会学の長老 真木悠介というのは、見田宗介の筆名である。見田いわく、社会学者としての要請として書く書物が「見田宗介」を名乗られ、個人的な学術的関心から書く書物が「真木…

アンソニーギデンズ「モダニティと自己アイデンティティ」

モダニティと自己アイデンティティ―後期近代における自己と社会(2005/05)アンソニー・ギデンズ商品詳細を見る ・日本で大人気の社会学者 現実の社会に現れている現象をスッキリと説明する「言葉」を開発すること、これが社会学のひとつの使命である。たとえ…

堤幸彦「SPEC」

SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿 DVD-BOX(2011/03/23)戸田恵梨香、加瀬亮 他商品詳細を見る ・堤幸彦らしさ 文章を読んだだけで、その文章を誰が書いたかわかるときがある。数行読んで「あれ、これもしかしてあの人じゃないか」と感じ…

赤木智弘「若者を見殺しにする国」

若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か(2007/10/25)赤木 智弘商品詳細を見る ・希望は、戦争 もう5、6年前になるけれど、「丸山眞男をひっぱたきたい 31歳フリーター。希望は、戦争」という論文が論壇誌に掲載された。「希望は、戦争」という…

吉本隆明「転向論」

マチウ書試論・転向論 (講談社文芸文庫)(1990/10/03)吉本 隆明商品詳細を見る ・なぜ今「転向論」か? 吉本隆明といえば、1960年代に活躍した思想家だし、「転向論」なんて戦前・戦中の思想家を分析した論考である。この2010年代になぜ、そんな昔の論考を読…

J・D・サリンジャー「フラニーとゾーイー」

フラニーとゾーイー (新潮文庫)(1976/05/04)サリンジャー商品詳細を見る ・「フラニーとゾーイー」の立ち位置 サリンジャー作品において「フラニーとゾーイー」は、あまり恵まれた立場ではない。「ライ麦」はもはや不動の地位を築いているし、有名どころが嫌…

三谷幸喜「古畑任三郎」

警部補 古畑任三郎 1st DVD-BOX(2003/12/17)田村正和、西村雅彦 他商品詳細を見る ・古畑にないもの 古畑任三郎を見ていて私がいつも心地よく感じるのは、ラストシーンである。だいたいいつもラスト間近になると、古畑が犯人を追い詰めて、自白に持ち込む。…

鈴木謙介「カーニヴァル化する社会」

カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書)(2005/05/19)鈴木 謙介商品詳細を見る ・「カーニヴァル(祝祭)」という捉え方 現代社会を表すキーワードとして「カーニヴァル(祝祭)」という言葉は的を射ている。 ネット炎上、ワールドカップ限定のナショナリズ…

大澤真幸「不可能性の時代」

不可能性の時代 (岩波新書)(2008/04/22)大澤 真幸商品詳細を見る ・現代の「閉塞感」 現代社会を診断するときに、よく「閉塞感」という言葉が使われることがある。不思議なもので、「現代は閉塞感に覆われている」というとき、何だかよく分からないけれど、…

高橋源一郎「優雅で感傷的な日本野球」

優雅で感傷的な日本野球 〔新装新版〕 (河出文庫)(2006/06/03)高橋 源一郎商品詳細を見る ・風呂上りに読む文章 音楽には、いくつかの役割がある。スピーカーの前に座って集中して聴くクラシック音楽があれば、環境のなかに溶け込んだBGM的な音楽もある。そ…

書籍・映像作品のまとめブログはじめました。

・本の内容を知ったうえで購入する 本の中身は、実際に読んでみないと分からない。いくらアマゾンの商品詳細やレヴューを読んでみても、「自分の知りたいこと」が書いてあるかどうかなかなか判断できない。本を書店で買う時代には、「立ち読み」という手段が…